「なんだか最近、疲れやすいな」「体重が増えてきたけど、何をどれくらい食べればいいんだろう?」
そう感じたことはありませんか? 私たちの体は、車がガソリンで動くように、食事から得るエネルギー(カロリー)で活動しています。しかし、その必要な量は、性別や年齢、さらには日々の生活スタイルによって大きく異なります。
この記事では、厚生労働省が発表している「日本人の食事摂取基準」を参考に、あなたが1日にどれくらいのエネルギーを摂取すべきか、具体的な数値で解説します。ご自身の年齢や性別、日々の活動量を照らし合わせながら、健康的な食生活を送るためのヒントを見つけましょう。
なぜ、必要なエネルギー量は人によって違うの?
1日に必要なエネルギー量が人それぞれ違うのは、主に以下の3つの要素が影響しているからです。
- 基礎代謝量(BMR: Basal Metabolic Rate)
生命を維持するために最低限必要なエネルギーのこと。心臓を動かしたり、呼吸をしたり、体温を保ったりするだけで消費されるエネルギーで、何もせずじっとしている状態でも消費されます。この基礎代謝量は、年齢、性別、身長、体重によって決まります。一般的に、筋肉量が多いほど基礎代謝は高くなります。 - 活動代謝量
日常生活や運動で消費されるエネルギーのこと。仕事や家事、通勤、スポーツなど、体を動かすすべての活動で消費されます。この活動代謝量は、身体活動レベルによって大きく変動します。 - 食事誘発性熱産生(DIT: Diet Induced Thermogenesis)
食事を摂ることで体が熱を作り、消費されるエネルギーのこと。食べ物を消化・吸収する過程で消費されます。
これら3つの要素を合計したものが、1日に必要な推定エネルギー必要量となります。
推定エネルギー必要量を知るための3つのステップ
ご自身の1日に必要なエネルギー量を知るには、次の3つのステップで確認できます。
- ご自身の性別と年齢を確認する
まずは、ご自身の性別と年齢を以下の表から見つけてください。 - 身体活動レベルをチェックする
次に、ご自身の生活スタイルがどの「身体活動レベル」に当てはまるかを確認します。- 身体活動レベル I(低い):生活の大部分が座ったままで、静的な活動が中心の場合。
- 身体活動レベル II(普通):座位中心の仕事でも、職場内での移動や立って行う作業・接客、あるいは通勤や買い物、家事、軽いスポーツなどを含む場合。
- 身体活動レベル III(高い):移動や立位での作業が多い仕事に従事している場合や、余暇に活発な運動を習慣的に行っている場合。
- ご自身の推定エネルギー必要量を確認する
性別、年齢、身体活動レベルが分かれば、以下の表でご自身の推定エネルギー必要量を確認できます。
男性:推定エネルギー必要量と参照身長・体重
厚生労働省が定める、各年齢における平均的な身長と体重(参照身長・参照体重)と、身体活動レベル別の推定エネルギー必要量(kcal/日)を見ていきましょう。ご自身の身長や体重と比較してみるのも良いでしょう。
男性:参照身長と参照体重
年齢(歳) | 参照身長(cm) | 参照体重(kg) |
---|---|---|
0~5(月) | 61.5 | 6.3 |
6~11(月) | 71.6 | 8.8 |
1~2 | 85.8 | 11.5 |
3~5 | 103.6 | 16.5 |
6~7 | 119.5 | 22.2 |
8~9 | 130.4 | 28.0 |
10~11 | 142.0 | 35.6 |
12~14 | 160.5 | 49.0 |
15~17 | 170.1 | 59.7 |
18~29 | 170.3 | 63.2 |
30~49 | 170.7 | 68.5 |
50~69 | 166.6 | 65.3 |
70以上 | 160.8 | 60.0 |
男性:推定エネルギー必要量(kcal/日)
年齢(歳) | レベル I(低い) | レベル II(普通) | レベル III(高い) |
---|---|---|---|
0~5(月) | 550 | – | – |
6~8(月) | 650 | – | – |
9~11(月) | 700 | – | – |
1~2 | 950 | – | – |
3~5 | 1,300 | – | – |
6~7 | 1,350 | 1,550 | 1,750 |
8~9 | 1,600 | 1,850 | 2,100 |
10~11 | 1,950 | 2,250 | 2,500 |
12~14 | 2,300 | 2,600 | 2,900 |
15~17 | 2,500 | 2,850 | 3,150 |
18~29 | 2,300 | 2,650 | 3,050 |
30~49 | 2,300 | 2,650 | 3,050 |
50~69 | 2,100 | 2,450 | 2,800 |
70以上 | 1,850 | 2,200 | 2,500 |
女性:推定エネルギー必要量と参照身長・体重
続いて、女性の参照身長・参照体重と、身体活動レベル別の推定エネルギー必要量(kcal/日)を見ていきましょう。
女性:参照身長と参照体重
年齢(歳) | 参照身長(cm) | 参照体重(kg) |
---|---|---|
0~5(月) | 60.1 | 5.9 |
6~11(月) | 70.2 | 8.1 |
1~2 | 84.6 | 11.0 |
3~5 | 103.2 | 16.1 |
6~7 | 118.3 | 21.9 |
8~9 | 130.4 | 27.4 |
10~11 | 144.0 | 36.3 |
12~14 | 155.1 | 47.5 |
15~17 | 157.7 | 51.9 |
18~29 | 158.0 | 50.0 |
30~49 | 158.0 | 53.1 |
50~69 | 153.5 | 53.0 |
70以上 | 148.0 | 49.5 |
女性:推定エネルギー必要量(kcal/日)
年齢(歳) | レベル I(低い) | レベル II(普通) | レベル III(高い) |
---|---|---|---|
0~5(月) | 500 | – | – |
6~8(月) | 600 | – | – |
9~11(月) | 650 | – | – |
1~2 | 900 | – | – |
3~5 | 1,250 | – | – |
6~7 | 1,250 | 1,450 | 1,650 |
8~9 | 1,500 | 1,700 | 1,900 |
10~11 | 1,850 | 2,100 | 2,350 |
12~14 | 2,150 | 2,400 | 2,700 |
15~17 | 2,050 | 2,300 | 2,550 |
18~29 | 1,650 | 1,950 | 2,200 |
30~49 | 1,750 | 2,000 | 2,300 |
50~69 | 1,650 | 1,900 | 2,200 |
70以上 | 1,500 | 1,750 | 2,000 |
妊婦と授乳婦:追加で必要なエネルギー量
妊娠中や授乳中は、お腹の赤ちゃんや母乳のために、さらに多くのエネルギーが必要となります。以下の「付加量」を、ご自身の身体活動レベル別の推定エネルギー必要量に加えて計算しましょう。
期間 | 付加量(kcal/日) |
---|---|
妊婦(初期) | +50 |
妊婦(中期) | +250 |
妊婦(後期) | +450 |
授乳婦 | +350 |
例えば、身体活動レベル IIの30歳女性が妊娠中期の場合、推定エネルギー必要量は 2,000 kcal + 250 kcal = 2,250 kcal となります。
「身体活動レベル」をより詳しく解説
推定エネルギー必要量を正しく把握するためには、ご自身の「身体活動レベル」を正確に理解することが非常に重要です。
身体活動レベル I(低い)
このレベルは、静的な生活が中心の方に該当します。
- 主な活動内容: デスクワーク、読書、テレビ鑑賞、スマートフォン操作など、座っている時間が一日の大半を占めます。
- 運動習慣: ほとんど運動をする習慣がない、あるいは軽いストレッチ程度。
- 該当する人: 一般的なオフィスでデスクワークが中心の会社員、在宅ワークが主婦、外出が少ない高齢者など。
身体活動レベル II(普通)
このレベルは、ある程度の身体活動を含む生活を送っている方に該当します。
- 主な活動内容: 座り仕事でも、社内での移動や立ち仕事、接客など、体を動かす機会が比較的多い。
- 運動習慣: 週に数回、軽いウォーキングやジョギング、ヨガ、ジムでのトレーニングなどを行っている。
- 該当する人: 営業職や販売員、教員、看護師、小さな子供のいる専業主婦、健康のために軽い運動を習慣にしている人など。
身体活動レベル III(高い)
このレベルは、非常に活発な身体活動を含む生活を送っている方に該当します。
- 主な活動内容: 一日の大半を立って過ごす、重い物を運ぶ、頻繁に歩き回るなど、身体的な労力を必要とする仕事。
- 運動習慣: 日常的にスポーツを行っている、あるいは競技レベルでのトレーニングを積んでいる。
- 該当する人: 建設作業員、農家、体育教師、プロスポーツ選手、スポーツクラブのインストラクターなど。
あなたの食生活をさらに健康にするためのヒント
1日に必要なエネルギー量を把握したら、そのエネルギーをどのような食材から摂取するかが重要です。ただカロリーを摂ればいいわけではなく、三大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂質)をバランス良く摂ることが大切です。
- 炭水化物: ご飯、パン、麺類など。体の主要なエネルギー源となります。
- タンパク質: 肉、魚、卵、大豆製品など。筋肉や臓器、皮膚、髪の毛など、体の構成要素となります。
- 脂質: 油、バター、ナッツ類など。細胞膜の材料になったり、ホルモンの生成に関わったりします。
健康的な食生活を送るためのポイントは、「主食、主菜、副菜」を揃えることです。
まとめ
1日に必要なエネルギー量を知ることは、健康的な体づくりを始めるための第一歩です。ご自身の推定エネルギー必要量を知ることで、「食べ過ぎていたかな?」「もう少し運動した方がいいかな?」と、日々の生活を振り返るきっかけになるでしょう。
今回の記事でご紹介した数値は、あくまで厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」に基づいた目安です。個人の体質や健康状態、目標(体重増加・減少など)によって最適な数値は異なります。
もし、ご自身の体型や食生活についてより詳しく知りたい場合は、専門家である医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。
あなたも今日から、適切なエネルギー摂取を意識して、いきいきとした毎日を送りませんか?
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